デジタルインクテクノロジーのSDK(Software Developer's Kit)としてワコムが提供している「WILL™」(Wacom Ink Layer Language) 。手書きのインクデータを、ハードウエアやソフトウエアなどの互換性を気にすることなく、自在に共有し、活用できるものです。
このWILL™の認知拡大と普及を目指し、取り組んでいるのがInk Division(インク・ディビジョン)です。2018年の立ち上げ以降、中国で唯一のプロダクト・マネージャーとしてお客さまをサポートするラニー・ジャンは、ワコムのソフトウエア開発にとって、Ink Divisionは「イノベーションセンター」の役割を担っているのだと語ります。さまざまに変化する環境の中で、常に挑戦を続けているラニーに、中国でのWILL™の取り組みや未来への思いについて聞きました。
自身の担当業務について教えてください。
ラニー:Ink Divisionに所属し、シニア・プロダクト・マネージャーとして、中国とアジア太平洋地域を担当しています。Ink Divisionは、ワコムのインクテクノロジーの普及を目指し、R&D(研究開発)に取り組む部門です。社内でも独立した立場で、他の部署のビジネスをサポートしたり、製品にどう付加価値をつけられるかを考えています。個人的には、インクにまつわる新しいアイデアやテクノロジーが生まれる、ワコムの「イノベーションセンター」だと思っています。チームには技術開発者もいますが、私たち自身がクリエイティブであることや、革新的なものへの探求心を持つことを最も大切に考えているからです。チーム全員で、明日のワコムを創っていくのだという意識で業務に取り組んでいます。
Ink Divisionの具体的な取り組みを教えてください。
ラニー: 私が携わったグローバルの事例としては、デジタル文具協会(DSC)(※)の創設メンバーの一員でもある、モンブラン社とのオーグメントペーパーの開発です。オーグメントペーパーは、モンブランの筆記具としての書き心地はそのままに、デジタルで書くことの利点を掛け合わせた製品です。モンブラン社とTSBU(テクノロジー・ソリューション・ビジネス・ユニット)の仲間たちと共に、このプロジェクトを実現できたことがとても嬉しかったです。
※2016年、ワコムの提唱により設立されたデジタル文具の普及や市場の発展を推進する非営利団体。
中国ではどのような取り組みを行っていますか?
ラニー:中国国内でのWILL™(Wacom Ink Layer Language)(※) の認知拡大を目指し、さまざまな業務に取り組んでいます。ここ数年は教育の支援に注力しており、2020年には、ニュー・オリエンタル・エデュケーション・アンド・テクノロジー・グループ(New Oriental Education & Technology Group Inc)が提供する「Roombox Whiteboard」にWILL™ SDKが採用されました。
Roombox Whiteboardは、同社が提供するオンライン学習プラットフォーム「New Oriental Cloud Classroom (Roombox)」で使用されている手書きの板書機能です。教師と生徒のインタラクティブなコミュニケーションを大切に考える同社は、WILL™に価値を見出し、WILL™ SDKを採用してくれました。Roomboxは、これまでに400万人以上が利用している中国最大のオンライン学習プラットフォームのひとつです。WILL™が毎日のように利用され、学習プラットフォームの価値向上に貢献できていると思うと、とても嬉しいです。
※WILL™とは、ユーザーが作成した手書きインクデータ(デジタルインク)をコンピューターの OS(Operating System)やハードウエアプラットフォーム、アプリケーション・ソフトなどの垣根を越えて、互換性を気にせず自在に共有し活用できるテクノロジーです。ワコムでは、幅広い領域でWILL™をご利用いただくためSDK (Software Developer’s Kit)を提供しています。
How to help optimize handwriting and stabilize output/手書き文字の最適化およびアウトプットの安定化を支援する方法(コネクテッド・インク2021より)
中国でのWILL™の認知拡大や普及のために、どのような挑戦が必要だと考えますか?
ラニー: Ink Divisionのミッションは、ワコムがハードウエアだけではなく、ハードウエアとソフトウエア、その周辺のサービスを含むソリューションまでを提供できる会社であるとお客さまにお伝えしていくことだと考えています。そのためには、お客さまと直接対峙する同僚たちの協力が欠かせません。チームメンバーにWILL™のテクノロジーを理解してもらうことは、非常にチャレンジングですが、面白いと感じていることのひとつです。特に、長年ハードウエアに携わってきたチームメンバーにとっては、WILL™ SDKといった基礎的な用語の理解から始まりますので、簡単ではありません。時間をかけて説明し、今ではインクテクノロジーが他社との差別化につながると理解してもらえていると思います。
ワコムは道具を提供するだけでなく、体験を提供したいと考えています。製品は入り口の一つです。法人のお客さまにも個人のお客さまにも、まずはワコムのテクノロジーを知っていただきたいです。その価値を理解してもらうために、マーケットを育てていく必要もあると思っています。
コネクテッド・インクやInkathon、デジタル文具協会といった活動にも取り組んでいますね。
ラニー: 中国でInk Divisionのプロダクト・マネージャーを務めるのは私だけですので、国内でのパートナーシップ構築のためのさまざまな活動に取り組んでいます。
Inkathon(インカソン)(※1)もコネクテッド・インク(※2)もデジタル文具協会(DSC)も、グローバルな催しとしてワコムが開催しているものですが、中国向けにローカライズすることで、国内のより多くの技術者やパートナーと出会うことができると考えました。
例えば、DSCでは、中国語でコミュニケーションできるWeChatのサービスアカウントを作って交流を図り、より国内のパートナーが参加しやすい環境づくりを行っています。また、コネクテッド・インクでは、国内のパートナーとともに、将来へ向けたテクノロジーの紹介や、新たなソリューションの可能性についてお伝えしています。
※1 2016年よりワコムが開催する、インクテクノロジーを活用したアプリの開発コンテスト。
※2 2016年よりワコムが主催する、アート、人間表現、学び、そしてそれらを支えるテクノロジーの新しい方向性を、ある問いから模索するイベント。
2011年に入社してから10年を超えるワコムでのキャリアの中で、特に印象に残っている出来事はありますか?
ラニー: 直接業務とは関係ないのですが、地元の図書館で、子どもたちに本を読むボランティアをしています。ある時、Bambooスマートパッド(※)を使って、本の内容を書いてみせたことがありました。子どもたちの関心を引こうと試したことだったのですが、Bambooスマートパッドを使って紙に書いた文字がタブレットにリアルタイムでデジタル化されるのを見て、子どもたちが「魔法みたい!」と驚いてくれました。一緒に参加していた保護者の方も「どうやってアナログからデジタルにしたんですか?」と興味を持ってくれました。これがワコムのテクノロジーの力で、このような魔法をかけられるのが私たちの製品なのだと思うと、とても誇らしい気持ちになりました。
※専用のペンで紙に書いた文字や絵をデジタル化できるノートパッド。日本国内では販売を終了しております。(2023年11月時点)
「イノベーションセンター」の一員として、イノベーティブであり続けるための秘訣は何でしょうか。
ラニー: 私は挑戦することが好きです。毎日同じことをやるよりも、新しいことに挑戦することを選びたいと思っています。挑戦の先には驚きが待っているのだと思うと、その機会を楽しむことができます。
デジタルインクテクノロジーについて説明することも、そのテクノロジーをお客さまに理解してもらうことも簡単ではありません。私自身、日々学びの連続ですが、学んだことを同僚やお客さまと共有することが、自らの矜持やワコムで働く意味につながるのではないかと思っています。同僚やお客さまとの会話から生まれた新たなアイデアが、新しい機会をもたらし、さらなる前進へとつながる原動力となっています。
今後実現したい目標や夢はありますか?
ラニー:ワコムが、ハードウエアの会社ではなく、道具を使うその先にあるソリューションを提供できる、創造的な会社として認知されることです。壮大な夢かもしれませんが、達成できると思っています。そして、より多くの人たちにデジタルインクの価値を知っていただけたら嬉しいです。今、デジタルインクテクノロジーの理解を深めるためのコミュニケーションアイデアを考えているところです。また、まだ製品化はされていませんが、社会の誰かの役に立つことを想像しながら、深めているアイデアもあります。これからもたくさんのお客さまにお会いし、新しい製品やテクノロジーをお届けできるよう、挑戦を続けていきたいです。
大宮光陵高等学校が取り組む「ペンタブアートチャレンジ2024」から生まれた作品『光陵生日常戯画』を紹介します。美術科と書道科の学生4名が共同で制作しました。
コネクテッド・インク2024にて、テーマ「日常」にちなんだキーホルダー作りを実施。ktymさんが制作したキービジュアルに登場するキャラクターたちをクリエイティブ・カオスで彩りました。
STEAM教育に取り組み、授業でワコムの液晶ペンタブレットを活用する聖学院高等学校。絵を描くことが好きな学生たちが中心となり、デジタル塗り絵のワークショップを開催しました。
チームメンバーと社会や環境について考え、対話することを目的に、難民映画祭パートナーズ上映会を開催しました。
「ワコムの道具と技術の力で社会とつながる小さな接点を見つける」をテーマに、体験の場を通じた、社会やコミュニティーとの関わり方を探求する過程の記録を紹介します。
Social InitiativesのこれからをワコムのMeaningful Growth(意味深い成長)につなげるため、CEOの井出とともに5年間の活動を振り返ります。
チームメンバーやコミュニティーの方々の作品を紹介する「私たちの灯り」。自閉症のスーパーヒーローを描いたYvonne Wanさんの作品を紹介します。
コネクテッド・インク 2023 のテーマは「森にかえる」。再び集まった仲間たちと一緒に、クリエイティブ・カオスの森にかえった記憶からいくつかの記録をお届けします。
ワコム・カナダは、シスラー高校が提供する「CREATEプログラム」にパートナーとして参画し、クリエイティブ業界へのキャリアパス支援を目指した包括的な取り組みに携わっています。
チームメンバーやコミュニティーの方々の作品を紹介する「私たちの灯り」。ワコムでインターンを体験したArian Rahmatzaiさんが、日本をテーマに描いた作品を紹介します。
クリエイターになりたいという子どもたちの夢はチームメンバーの心の灯りと重なり、多くの取り組みにつながっています。鹿児島県錦江町のアニメーション制作ワークショップに協力しました。
目に見えないマイクロマークを作品に埋め込むことでクリエイターの創作の証を記録するサービス、Wacom Yuify。地域や文化によって異なるクリエイターの要望に応えようと開発を進めています。
デジタルインクテクノロジーの認知拡大と普及を目指すInk Division。中国で唯一のプロダクト・マネージャーとして挑戦を続けるラニー・ジャンに取り組みに対する思いを聞きました。
「私たちの灯り」では心の灯りをテーマにチームメンバーの作品を紹介してきました。今回は「かくこと」を軸にともに取り組みを進める神奈川県大磯町のアーティストによる作品を紹介します。
コミュニティーとの交流を目的に生まれたワコム・エクスペリエンス・センター・ポートランド。その旗振り役を務めるメーガン・デイビスの心の灯りとともにこれまでの成長を振り返ります。
二つの大きな問いかけとともに開幕したコネクテッド・インク2022。東京で開催されたいくつかのセッションを紹介しながら振り返ります。
詳細はこちら「私たちの灯り」では心の灯りをテーマにチームメンバーの作品を紹介してきました。今回は「かくこと」を軸にともに取り組みを進める神奈川県大磯町のアーティストによる作品を紹介します。
詳細はこちら神奈川県大磯町とのコラボレーションは「かくこと」を軸に町全体の取り組みへと広がりをみせています。担当するクリエイティブBUの坪田直邦に話を聞きました。
チームメンバーの心の灯りを起点に、コネクテッド・インクという多面体の一面を覗いてみます。二人目は、Corporate Engagementを担当する桧森陽平です。
チームメンバーの心の灯りを起点に、コネクテッド・インクという多面体の一面を覗いてみます。一人目は、2016年から企画運営の中心的役割を務めるハイジ・ワンです。
2021年9月、ワコムは、株式会社ヘラルボニーと一般社団法人コネクテッド・インク・ビレッジと共に、「コール・アンド・レスポンス」(呼びかけと呼応)という新たな取り組みを始めました。
当日行われた70近いセッションの中からオープニングとフィナーレを振り返り、コネクテッド・インク2021がもたらしたものについて考えてみます。
「心の灯り」をテーマに、二回目となるアートコンテストを開催しました。思いもよらぬ出来事にさまざまな変化が起こる中、今、そして未来へと続くチームメンバーの心の灯りを作品を通して紹介します。
「コネクテッド・インク2020」は、終わりなき問いを続けていくワコムの新たな覚悟であり、挑戦の始まりでした。
コネクテッド・インク2020の舞台として制作された「ステージKOPPA」。多様な場面に応じて、形や役割を変化させ、そこで起こるさまざまな物語をつないでいくステージです。
「心の灯り」をテーマに、二回目となるアートコンテストを開催しました。思いもよらぬ出来事にさまざまな変化が起こる中、今、そして未来へと続くチームメンバーの心の灯りを作品を通して紹介します。
私たちの取り組みで大切にしている「灯り」をテーマに、チームメンバー(社員)を対象にしたアートコンテストを開催しました。チームメンバーによる投票で選ばれた三作品を紹介します。
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、外出自粛をしていた子どもたちに何か楽しい時間を提供したい。FC KAZOとイラストレーター・すいいろさんと共に、小学生を対象としたオンラインお絵描き教室を開催しました。
FC KAZOと共にチームと地域を育てたい。ワコムは埼玉県加須市のフットボールクラブ「FC KAZO」のオフィシャルパートナーとして活動を支援しています。
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新型コロナウイルス感染拡大防止による休校中の子どもたちを対象に、ドイツのチームメンバーがオンラインワークショップ「Young Wacom」を開催しました。
アメリカでカスタマーオペレーションを担当するアレックス・ダフィーは、アーティストを支援する新たなプログラムを立ち上げました。このプログラムを立ち上げるきっかけとなったアーティストのデボン・ブラッグ氏との物語について、アレックスに聞きました。
KOPPAのはじまりは2019年4月。伊藤さんの展示制作がきっかけでした。展示後も「また誰かに使ってもらえるものにしたい。」KOPPAに込められた思いをお聞きしました。
自分たちで組み立てて、広げて、しまって、また一緒に旅に出る。壊すのが当たり前であった展示什器の在り方を大きく変えた「旅するKOPPA」が誕生しました。
建築現場の端材を活かせないかと、建築家の伊藤維さんの呼びかけで生まれた家具「KOPPA」。ワコムとの出会いは小さな偶然がきっかけでした。
私たちの取り組みで大切にしている「灯り」をテーマにアートコンテストを開催しました。作品を通して、チームメンバーが大切にしている心の灯りの存在を紹介します。
東京工業高等専門学校で技術者を目指す学生を対象にマーケティングの講義を行いました。
高校生のデジタルコンテンツ制作支援のため、倉庫に眠るペンタブレットを高校のクラブ活動や学校対抗のコンテストの副賞として毎年贈呈しています。
学習中の視線データとペンの動きから、生徒個人の学習特性を明らかにし、個人に合わせた学習環境を提供する「教育向けAIインク」を開発しました。
ブルガリアで働くソフトウエアデザイナー、ヨアナ・シメノヴァは、子どもたちのITクラスをもっと楽しくしたいとWacom Intuosを学校に導入しました。